第28章 学生気分
『具体的に何をする祭りなの』
具体的に、という彼女らしい質問に、轟が一考し、今の段階で差し迫って必要そうな情報を選び、提示した。
「出店がでる」
『出店?』
「露店だ。学生が運営する。夏祭りとかにある…」
と言って、轟は口をつぐんだ。
「…夏祭り、知らねぇか。そうか、悪い。…大体、一クラス一つ催しをする。食べ物屋とか、演劇とか。クラス単位で、なんかやる」
『なんか』
「それを議論して決める。その議論が今だ」
『…』
は轟の説明を聞き、コクリと頷いた。
「メイド喫茶!」
「クレープ屋!」
「…ふれあいどうぶつえん」
一人、一つ提案を頼む!という飯田の号令に従い、普段はあまり発言しない生徒たちも挙手をして思いついた催しを列挙していく。
なんだかそわそわとして落ち着かないを横目で見ていた遠くの席最後列の麗日が、に手を振り、片手をメガホンのようにしてに声をかけてきた。
「ちゃん、好きな食べ物屋さんにしたらいいよ!私おもち屋さん!」
『…ありがとう』
その会話を聞いて、おぉ、なるほど、と轟もと一緒にうなずいた。
「はい、さん」
『焼き鳥屋さん』
「王道!いいじゃん」
「焼き鳥食いてー!」
の意見を聞き、切島と上鳴が座席を振り返りリアクションする。
『…ありがとう』
受け入れられたことがよほど嬉しかったのか、少しはにかむ。
「「「!!!!????」」」
普段、愛想笑いなど欠片も見せない女子の微笑みを目の当たりにした数名の男子生徒が呼吸困難に陥った。
「やっぱメイド喫茶よくねぇか…」
「めちゃくちゃいい…」
「守りたい、その笑顔」
悶絶している数人の男子たちのうめき声をかき消す声量で、爆豪が「デスマッチ」と物騒な催しを提案した。
次いで、そんな物騒さを気にも留めない轟が「手打ちそば屋」と純和風な提案をする。
『そばいいね』
とが賛同してくれた声を聞き、また轟が振り返って、あぁ、旨いよな、とごく自然に返事を返す。
その様子を、空席になった八百万の座席の前に座っている峰田が、血眼になってガン見し続ける。