第25章 プロローグ
「ホークスと話したのか」
なぜか大宴会の後の様に散らかっているリビングを常闇と手分けして後片付けしながら、寝る準備を始める。
俺も手伝う、と参戦してこようとした轟だったが、活動限界が来る前にと、常闇との二人で彼を男子棟のエレベーターに押し込んだ。
『話したよ。せっかく推薦してもらったのに、情けない。常闇くんにも申し訳ないことをしたよね』
「…俺のことを気にする必要はない。おまえの活躍は十分だったとホークスから聞いた」
『…。』
身に余りある、お言葉ですね。
が眉間にしわを寄せて、余った焼餅を口にした後、汚れた皿をキッチンへと運んだ。
「勿体ない食べは太るぞ」
『だって勿体ない』
もったないから、チーズも食べる。
はまた山から一つチーズを取って、自分の口へとそれを放り込んだ。
この短時間で食すには、あまりにも多いそのチーズの山を見て、常闇が一考した。
彼はキッチンのシンク下から、小鍋を取り出して。
、と彼女を誘った。
「これから作るのは闇鍋だ」
『闇鍋?』
そう前打った常闇は、小鍋の中にざらざらとチーズの残党たちを落とし込み、火にかけた。
数十秒もしないうちに。
小鍋のなかで、チーズの香ばしい匂いが沸き上がる。
『あー、なんだっけ。これ見たことある』
「闇鍋だ」
『これが闇鍋?』
「カロリー爆弾」
『爆弾?』
常闇はテーブルの上にまだ転がっていた、焼餅の残骸や、誰かが持ち寄ったマシュマロの袋を回収してきた。
「つけて食べる」
『闇の爆弾だね』
「あぁ」
好きだろう、甘いもの。
常闇が少しうきうきとしながら、竹串をさがそうとキッチンのいたるところを探しながら、そう言った。
そして、彼女専用にされてしまっている、コーヒーパック棚を発見した。
「…ホークスも、もなぜ甘くしないと飲めないのにコーヒーを飲むんだ」
『かっこいいから』
そんな理由か。
間の抜けた返答を受けて、常闇が面食らう。
けれど。
『おいしそうですねぇ』
匂いが立ち込めている、鍋を見つめて。
一晩かけて、ようやく。
ようやく、やっと。
少しだけ、雰囲気が柔らかくなったを見ていたら。
そんな抜けた返答のことなど、すっかり。
どうでもよくなってしまう常闇だった。