第3章 始めの一夜
「奇遇だね、俺もしないんだ釈然…」
「そうだな」
「僕も☆」
上鳴の言葉に呼応したように、自室をバッサリと酷評された数名の男子たちが呟き始めた。
そんな民意を盾にして、その変態気質故、女子に自室へ立ち寄ることすらしてもらえなかった峰田が、短い両腕をめいいっぱい伸ばし、女子たちに指さした。
「男子だけが言われっぱなしってのは変だよなァ?「大会」っつったよな?なら当然!女子の部屋も見て決めるべきじゃねえのか?誰がクラス一のインテリアセンスか、全員で決めるべきじゃねえのかぁ!?」
いいじゃん!と乗っかる芦戸の隣、峰田の口からヨダレが溢れ出ている様子を眺めていたが、手に持つノートに「峰田実「変態」」と書き込んだ。
『きりがいいから、私、ちょっと蛙吹さんの様子見てくる。女子棟だったらいつでも行けるから、また今度見せて』
「あ、そういや梅雨ちゃん、焼肉だってのに姿見なかったよな」
「えっ、さん、気にせんで。私梅雨ちゃんの様子見てくるし!」
「どうせこれから女子棟行くんだし、みんなで様子見に行くか?」
「えぇっ、そんなそんな!気分優れないって言ってたから、大人数で行くのはよくないかもしれん」
「それもそだな、心配だな」
さんと私が行ってくる!
と焦ったようにの手を引き、早足で団体から離脱する麗日。
二人でエレベーターに乗った後、麗日が振り返り、申し訳なさそうに話し始めた。
「あのね、実は…」
『うん?どうしたの』
「…梅雨ちゃん、えっと、その…なんて言ったらいいかわからないんだけど…今元気なくてね、それで…」
『…来てほしくないかな?』
「え!そういうんとちゃうよ!あの…」
あのね、と。
麗日は話しにくそうに片手を自分の手でさすりながら、重い口を開いた。
「ちょっと、気まずいんだって。喧嘩じゃないけど、ちょっと飲み込めてないことがまだあって、それで上手く話せない人がいて、話したいことがまとまるまで、あまり話したくないって…」
普段はこんなことないんだよ、梅雨ちゃんは良い子だよ。
そうは言っても、人知れず板挟みになっているらしい麗日は、困ったように眉を八の字にして、はぁ、とため息をついた。