第3章 始めの一夜
「クラス屈指の実力者ですわ」
「クラス屈指のイケメンボーイ!」
「クールだよ!とってもクール!」
の前を歩いていた八百万と、の手を引く芦戸と葉隠がそう答えた。
「あ、そっか!次の部屋って」
「轟さんですわね」
「さっさと済ましてくれ、ねみい」
特に嫌がる素振りも見せず、順番の回ってきた轟が自室の扉を開け放った。
我先にと飛び込んでいくクラスメート達が、ぎょっとして目を見張る。
「和室だ!?」
「造りが違くね!!?」
「実家が日本家屋だからよ、フローリングは落ち着かねえ」
そんな理由で即日リフォームした、がんばった、と言う轟のコメントを聞き、緑谷は、のかぼちゃ落下事件で、轟に救護を頼むため部屋に呼びに行った時、確かに彼は畳らしきものを小脇に抱え、何やら大がかりな部屋作りに勤しんでいるらしい姿を見かけていたことを思い出した。
「イケメンのやることは違えな…」
「大物になりそ」
轟の部屋を見た後は、男子最後の砂藤部屋。
順番の暴力に打ちひしがれていた砂藤だったが、自作のシフォンケーキの存在を思い出し、みんなにその腕前を披露することとなった。
「あんまぁい、フワッフワ!」
「素敵なご趣味をお持ちですのね砂藤さん」
自然と綻ぶ女子たちの笑顔に、砂藤がトゥンク、と高まる胸を押さえて、まだお皿に手を出さずにいたにも、ケーキを差し出した。
「も食、食うか?」
「さっぱりした甘さだからいくらでもいけるぜこれ!食ってみ!」
『いいの?ありがとう』
ランっと目を輝かせて、がケーキを口に頬張った。
『美味しい』
「な!さすがシュガーマンを名乗るだけは…うまっ」
感心するように、瀬呂の言葉にコクコクと何度も頷きながら、がノートに「砂藤力道「ケーキ」」と書き込んだ。
「さん、審査員みたいだねー」
『え?いや、特に審査っぽいことは何も』
「つーかよ」
何か、釈然としねぇ。
ブスッとふて腐れた上鳴の声を聞き、「あー楽しかった!」と口々にこの会のお開き感を滲ませていた女子たちが振り返った。