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イカロスの翼【ヒロアカ】

第25章 プロローグ




『緑谷くん』
「えっ、あ、なに!?」
『キミは甘いもの好きなの』


真顔で。
彼女は緑谷に話題を提示する。


「…す、すきだよ。甘いもの。飲めるよ」
『そうなんだ。カフェオレ派?コーヒー牛乳派?』
「え。…カフェオレとコーヒー牛乳って派閥なの?」
『まったく別の畑だよ。どっちもおいしいけど』


は宙吊りになっている右腕の方向を向いて。
病室の窓の外で舞っている、木の葉を眺めている。


「…ナイトアイのこと」


緑谷はうつむいて。
問いかけた。


「聞いた?」
『聞いたよ』


イエス、と。
彼女は答えた。


「ごめん」
『なんの謝罪』
「僕が足を引っ張った」
『それはそうだね』
「…ッ」


謝って、どうするの。
彼女はそう言って、また緑谷へと視線を向けた。


『許されたいの?』
「ッちが…!」
『なら謝ってどうするの』
「………」
『謝らなきゃいけないことなら、私もたくさんあるよ』
「…え」


そして、彼女はまた窓から遠くの景色を見ながら。
とつとつと吐露した。
隠し部屋までの正規ルートの暗記を、自分なら短期間で可能だと、作戦前に申し出なかったこと。
トガへの蹴りを空振りしてしまったこと。
トゥワイスの腕力に勝てなかったこと。
緑谷を助けるつもりが、自分が深手を負ったこと。


『みんながみんな、足を引っ張った。完ぺきなチームワークじゃなかった。まるで烏合の衆だった』


チームアップなんて呼べるものじゃなかった。
そう彼女は結論付けた。


『だけど』


『誰よりも私が足を引っ張った。戦闘中に気を失った。目が覚めたらナイトアイがもう亡くなってた。全てが終わってた、だから…!』






こんな、役立たずのために。
謝りになんか来ないでよ、と。




が強い口調でそう言った。






「僕だって、守らなきゃいけないエリちゃんに助けられて、先生にも助けられて…君にも、助けられた」


緑谷こそ。
さんざん周りの足を引っ張って。
守れたかもしれないはずの命を、守れなかった自覚がある。


「…ナイトアイから、伝言があるんだ。さんに伝えてほしいって」


死の間際。
彼は言い遺した。
























「私のために、怒ってくれてありがとう」












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