第25章 プロローグ
治崎確保後。
動ける者は地元ヒーローらと合流し、被害の確認にあたっていた。
一方で、戦いで傷ついた者たちは、最寄の大学病院へ搬送された。
一夜を越すことのなかったナイトアイの最期を、数名の関係者が見送って。
また、一日、日が昇る。
比較的軽いけがの診断を受けていた緑谷だったが、病院側から許可を取り、仲間たちの隣の病室で一泊していた。
ようやく翌日、の面会の許可が下りたと知り、彼女の病室を訪問した。
「失礼します、さーーー」
すると、そこには既に天喰がいた。
「「あっ………」」
何とも言えない不思議な沈黙が流れる。
目を丸くして、見つめ合う緑谷と天喰。
眠そうな目で、そんな様子を眺めていたは、フッと笑った。
『どういう間?』
「あ、さんおはよう…天喰先輩も、おはようございます」
「おはよう…あ、あの俺はお邪魔だろうからすぐいなくなるよ!」
「えっそういう意味で見つめていたわけじゃないです!」
「えっ、そうなの?…でも、お邪魔だろうから…!」
『緑谷くん、扉閉めてこっちへおいでよ』
は自由になる方の左手で、空いているパイプ椅子を指さした。
ありがとう、とひとまず椅子に座った緑谷は、なぜかコスチュームケースを両腕で抱え、膝の上にそれをギュッと抱え込んでいる。
『置いたら?』
「えっ、あっ!」
どんがらがっしゃん、という音がしそうなほど盛大に、緑谷がコスチュームケースを転げ落とした。
ぎくしゃくとしている彼の一挙一動を眺めて。
ぼんやりと眠い目を擦っていたは、問いかけた。
『天喰先輩』
「えっ」
『私のカバンから、財布を取ってくれませんか。可能なら、甘いものが飲みたいんですが、購買で買ってきてもらえませんか?』
「う、うん。甘いものって?」
『カフェオレが飲みたいです』
「カフェオレ?…なかったらコーヒー牛乳とかでもいい?」
『カフェオレです』
「な、なくてもカフェオレね…」
財布を持たずに部屋から出ていこうとした天喰を、が引き留める。
天喰は首を二回横に振って、緑谷くんは何がいい?と彼に質問をした。
緑谷は三回首を横に振ったが、天喰は「じゃあ、君もカフェオレね」と勝手に決めて、病室から出て行ってしまった。