第3章 始めの一夜
「お部屋披露大会、しませんか!?」
夕食後。
一部の女子たちから提案された「ちゃんとお近づきになろう企画第一弾」。
部屋を見せれば個性がわかる、なんて嘘か本当かわからない理由を持ち出して、押しの強い芦戸が、半ば強行突破する形で一つの男子部屋を開け放った。
「わああダメダメちょっと待ーーー!!!」
個室の占有者である緑谷の抵抗も虚しく、彼は興味本位で釣られてきていた大多数のクラスメート達に、個性溢れる個室を大公開することとなった。
「オールマイトだらけだ!オタク部屋だー!!」
「………憧れなんで…恥ずかしい……!」
あたり一面、オールマイト。
オールマイトフィギュアに、オールマイトポスター、ブロマイドにタペストリーに、何もかもがオールマイト一色。
芦戸に手を引かれ、連れまわされているは、そんな彼の個室に足を踏み入れ、キョロキョロと周りを見渡した後、じっと緑谷を見つめ、問いかけた。
『…オールマイト好きなの?』
「さぁっ緑谷!自己紹介どーぞっ!」
「芦戸さん、僕一応もう自己紹介してて…」
「どーぞっ!」
「えっ。…あっ、えっと、緑谷出久です。好きなものは…」
オールマイトです、オタクです、と赤面してうなだれる緑谷を見て、他の1年A組の面々は、「部屋を見せれば個性がわかる」なんて言っていた芦戸の言葉を、あながち間違ってはないのかも、と思い直した。
「やべえ何か始まりやがった…!」
「でもちょっと楽しいぞコレ…!」
次鋒は常闇。
「黒!!怖!!!」
「出ていけ!!」
中堅は青山。
「まぶしい!!」
「ノン・ノン、まぶしいじゃなくて、ま・ば・ゆ・い!」
「思ってたとおりだ、想定の範疇をでない」
女子たちの舌剣に、次々と斬り伏せられていく男子たち。
緑谷は「オールマイトオタク」、常闇は「中2感」、青山は「まばゆいモノ好き」、尾白は「普通」、飯田は「眼鏡」、上鳴は「チャラい」、口田は「動物好き」、爆豪は「不参加キャラ」、切島は「アツクルシイ」、障子は「ミニマリスト」、瀬呂は「ギャップの男」。
みんなの厚意を無駄にしまいと、そんなキャッチコピーを小さなノートに書き込みながら、お部屋巡りツアーに参加していたが、次の個室の表札を目にして、口を開いた。
『ねぇ、轟くんってどんな子?』