第23章 かごの中の鳥
「気の小さい人ほど」
「自分が弱いのを隠したがります」
視線は、頭上に向けて。
悠々とした嘲笑を口元に浮かばせて。
「自分を強く見せたくて、他人を上から見下すのです」
その視線につられるように。
緑谷が、台風の目の様に流れが収束している天井の一点を見上げた。
ゴクドー、かっこわるいですね。
その、知ったかぶったような彼女の一声を。
聞き流すことができなかった。
言葉にならない奇声を発し、入中が叫んだ。
デクが壁をバウンドして跳び回り、天井のコンクリと一体となっていた入中の腹部を蹴り上げた。
イレイザーヘッドが入中を個性で捉えた次の瞬間、生き物のように動いていたコンクリは一斉に動きを止め、入中は天井から落下する。
取っ組み合いを続けていたフェニックスとトゥワイス。
殴り合いの最後。
フェニックスの手が、トゥワイスの頭部に巻かれたハンカチをガッと掴んだ。
そのままハンカチを剥いでやろうと、フェニックスは手を持ち上げる。
「あぁぁ…!!」
持ち上げたハンカチの隙間から
今にも泣き出しそうなトゥワイスの瞳の色を見た
やめてくれ、と
必死にハンカチを両手で引っ張るトゥワイスの声を聞いた
『ーーーーー。』
は、そっと。
トゥワイスの頭部をしっかりと包んでいたハンカチから
血だらけの自分の手を手放した。
『カルラ』
フェニックスはその場で飛びあがり、頭上に降ってきていた入中を捕縛する。
泣き出してしまいながら、再度その隙に、トガからもらったハンカチをしっかりと結びなおすトゥワイス。
「仁くん!」
「…お、おう!トガちゃん今行く!」
逃げ足速く、プロヒーロー達から十分な距離を取ったトゥワイスと、トガヒミコ。
二人は逃亡ざまに振り返り。
「「バイ!」」
と短く、あえなくお縄となった極道者に手を振った。