第23章 かごの中の鳥
「出久くん!!かごめちゃん!!」
イレイザーヘッドが捕縛布でトガをデクから引き離した、その瞬間。
は、宙を舞うトガの顔面目掛けて足を振りぬこうとしていた。
嬉しいなァと。
こんな状況で、嬉々として笑うトガとの視線が交差する。
『ーーー。』
超加速をしていたの蹴りは、虚空を切った。
(最悪…!いや!ここで仕留めてしまえば却って)
イレイザーヘッドの思惑も空しく。
「ここまでだ渡我被身子!!」
眼中にない男からの声かけに。
トガは明確な苛立ちをその瞳に浮かばせて、振り返った。
彼女は捕らえられていない片腕で相澤の手元近くの捕縛布を起点として掴み、180度宙返りをして、イレイザーヘッドの背後に回り込んだ。
そして、落下するより先に。
彼の右肩をナイフで突き刺した。
「先生!?」
「大丈夫だ、近付くな!」
『…ッ』
状況についていけなくなっていたがハッと我に返り、トガが転がっていった闇の方へと駆け出した矢先。
入中によって、その進行方向がコンクリでドッという重い音を立てて、閉ざされた。
『…かごめ?』
一体、何の話なのかわからない。
よくわからない不気味さを感じたからか、動悸がする。
深呼吸をしながら、相澤の傷口を確認する
の横顔は、まるで血の気を失ったように青白い。
「さん、大丈夫…?さっきの、かごめって」
『…大丈夫。何のことか私にもわからない。イレイザー、止血を』
何にせよ、と。
彼女は言葉を区切り、相澤の傷口を白炎で覆った。
『捕まえる』
「…デク、ナイフを拾っておけ、トガは血を使う」
すまない、と相澤がに声をかける。
暗いゴーグルの向こうから、じっと監視してくるような相澤の視線を、は真っ向から受け止めた。
『…いえ』
視線を逸らすことなく、数秒。
疑い深い大人たちのその視線から、逃れることなどできないと知っているは、ただ、相澤と視線を合わせ続ける。
少なくとも。
今回の件に関しては。
『…何も知りません』
「そうか」
やっと、相澤の視線がから外れた。
今だ落ち着かない鼓動の音を自覚しながら。
は、深く、深く。
息を吐いた。