第22章 日常
ファットガム達の姿が広間から見えなくなった、数分後。
3対1という数的劣勢の中、天喰は三人の敵を相手に奮闘し続けていた。
寄せ集めのチームだと思っていた敵は、存外、流れるような連携を繰り出し、天喰をジワジワと追い詰める。
「俺たちはゴミだが、ゴミなりに固い絆で結ばれているのさ」
結晶化の個性を持つ男のフルスイングが、天喰の身体に打ち込まれた。
「ガハッ…!」
肺から空気が押し出され、呼吸が止まる。
結晶化された男の腕と、壁に挟まれながら。
天喰は言葉を吐いた。
「…おまえたちは逮捕される。俺に勝っても先は無い…!」
「それがどうした」
事も無げに敵が答える。
「或る者は社会に適応できず捨てられた」
「或る者は恋人に裏切られ多額の借金を背負った」
「或る者は金の亡者に道具として利用され、生成した宝石が金にならない贋物だとわかると」
「要らぬ人間だと徹底的に打ちのめされた」
「ヒーローには理解できんさ!てめえらが言う、「普通」になりたくともなれなかったゴミの言うことなんざ!!」
その時。
天喰の頭の中で、彼女の声が思い起こされた。
私に
普通のことができるかなぁ
毎日、毎日。
さんは水をやっていた。
花が咲く日を楽しみにしていると言っていた。
けれど、インターンから帰ってきたあと。
彼女からのメッセージで知った。
〈根腐れ?って言うんですかね。私がいない間、クラスの人たちが気を使って、それぞれ水やりしてくれてたみたいで〉
そのメッセージが来たのは、土曜日の早朝だった。
俺は、なんだか。
いてもたってもいられなくて。
彼女の育てていた鉢植えが気になって、土曜日なのに、校舎へと駆け出した。
そして1-Aのクラスへと入ろうとした時。
彼女の姿を見つけた。