第22章 日常
(何か…!何か話題を…!!)
さんと二人で職員室を出た。
俺たちはまず、美化週間に使用する掃除用具が保管されている場所を見に行くことにした。
「美…化週間…っていうのは…生徒たちが、意識的にいろんな場所を美化する週間のこと」
『はい』
「雄英は広いから…掃除用具は、それぞれ学年ごとに、小スペースに収納されていて…掃除用具は…」
自分で自分が何を言っているのかわからない。
こんな話題でいいのだろうか。
コミュニケーション能力が低すぎて悲しくなる。
説明して、とミッドナイトに言われた。
なら美化委員会の説明が話題で問題ないんだろうか、どうなんだろうか。
「…」
話題が途切れた時。
ふと。
ーーー彼女編入してきたのよ。
そんなミッドナイトの言葉を思い出した。
「…」
だから、分不相応に口走ってしまったんだ。
「…友達…」
彼女は、階段を踏み外さないように足元へ向けていた視線を、俺に向けた。
「ッ」
『……友達?』
「……と…友達、は、できた…」
そう聞いてしまってから、俺は後悔をした。
(できてなかった場合どう責任を取るつもりなんだ俺は…!?)
話題を確実に選び間違えた。
なぜ、こうなる。
なぜスマートにできない。
二年も先輩なのに。
『友達、できました』
その吉報に、俺は泣きそうになりながら打ち震えた。
「よかった!!!」
『おぉ、声量…ありがとうございます。気にかけていただいて』
「いや、デリケートな質問をしてすまない、本当に申し訳ない…!!」
『はは、大げさです』
轟くんが、友達になってくれました。
さんは嬉しそうに、笑った。
「轟くんか…彼は、なんだか…入学した頃とだいぶ雰囲気が変わった気がする」
『そうなんですね。入学した頃っていうと…』
『何月ですか?』
そう彼女が俺に聞いた。
俺は、ユーモアセンスに長けたミリオと毎日会話をしているから。
てっきり、彼女もユーモアな質問をしてきてくれたんだと思って。
少しだけ、笑ってしまった。
「フ…4月だよ」
『4月ですか』
へぇ、そうなんだ、と。
また階段の踊り場へと歩みを進めた彼女が、そんな風につぶやくから。
俺は少しだけ、彼女と一緒にいる時間が楽しくなった。