第21章 足枷
緑谷と切島が壁を破壊し、正規ルートが現れた矢先のことだった。
「待て!!」
「道が…うねって変わってく!!」
駆け出そうとしたプロヒーローたちの行く手を阻むように、コンクリート制のはずの通路の壁、地面、天井全てが、まるで蛇がうごめいているかのように波打ちはじめた。
警官が、叫んだ。
「治崎じゃねえ!考えられるとしたら本部長「入中」!」
死穢八斎會本部長、入中常衣。
個性ーーー「擬態」。
彼はモノに入り自由自在に操れる。
つまりは。
『地下を形成するコンクリに入り込んで、妨害をしている…!』
先ほどの袋小路を生み出したのも、入中の個性に間違いない。
道をつくり変えられ続けてしまえば、スピード勝負のこの作戦は、詰んでしまう。
「こんなのはその場凌ぎ!どれだけ道を歪めようとも目的の方向さえわかっていれば俺は行ける!」
「ルミリオン!」
先に向かっています、と。
ルミリオンが透過し、壁に溶け込んだと同時。
先頭集団を走っていたプロヒーロー達の足元が、抜けた。
「うわあっ!」
『っ』
階層、一階分。
足元の地面が穴に変化し、数名のプロヒーロー、警官が穴へと落下していく。
は瞬時にカルラを呼び出し、ぐるりと体を半回転させ、落下人数を確認した後、瞬間移動した。
(1名、234…他、ヒーローのみ)
は、パパパッという軽い破裂音と同時に瞬間移動を繰り返し、下の階へと叩きつけられそうになっている警官4名を一か所にかき集めた。
『ファット!』
「任しとき!」
集束地点は、プロヒーロー ファットガムの真上。
仰向けに寝た状態で、地面へと落下したファットガム。
その腹部へと、警官たちの身体が降り注ぐ。
次いで、ドドドッという衝突音と共に、プロヒーロー、候補生たちが足の裏でしっかりと受け身をとった。
「ナイス!」
『出入口付近に敵影!』
落下地点は、先ほど通過した一広間のようだった。
部屋に充満している土煙の中。
出入り口の傍から、三人の構成員が姿を現した。
「おいおいおいおい空から国家権力が…不思議なこともあるもんだ」
明らかな時間稼ぎをしてくる敵の姿を前にして。
進み出たのは、一人のヒーロー候補生。
『ーーー天喰先輩?』