第21章 足枷
「なあんじゃてめえら!!」
「おうおう何しとんじゃ!!」
「追ってこないようおとなしくさせます!」
「もうすぐだ急ぐぞ!」
抵抗する八斎會の構成員たちを無力化していきながら、ナイトアイ事務所、チームアップされたプロヒーロー、ヒーロー候補生たちが屋敷の中を駆け抜けていく。
「なんだ、行き止まりじゃねえか!」
本案件はスピード勝負。
それは、この救出作戦の目的である、壊理という少女を必ず保護するにあたって、最重要事項である。
屋敷の中には幾重にも張り巡らされた、隠し通路が存在している。
「足がつかないように」と、昔の極道者が決まってよく使った手口だ。
その通路から連なる部屋のどこかに、少女が監禁されているという情報をつかんだナイトアイは、巧妙に隠されている少女の居所まで作戦中に最短でたどり着けるよう、入念に下調べをしていたはず。
(ナイトアイが予知で見たはずの隠し通路がなくなっている)
その下調べが外れた?
そんな推測がの頭の中に飛来した。
「説明しろナイトアイ!!」
「道合ってんだよな!?」
が口を開かずとも、他の大人たちがざわつき、ナイトアイを非難する。
(…ロックロック、張り詰めて、余裕がない)
公安の資料上では、ある程度優秀なプロヒーローという評価がついていたはず。
なのになぜ。
彼は変容したのだろうか。
(あぁ、子どもが生まれたからか。だから、他人事ではいられないと)
ほんの数秒。
は、他人の人生に思いを馳せて、すぐに視線を前方の袋小路へと戻し、浅く息を吐いた。
そして、また視線を両サイドに並び立つ切島と、緑谷へと移した。
(…二人も張り詰めてる。けど、余裕がないようには見えない)
「俺見て来ます!!…壁で塞いであるだけです!ただかなり厚い壁です」
透過で壁をすり抜けたルミリオンの報告を聞き、ファットガムが壁を割ろうと身構えた。
そんな彼を差し置いて。
「来られたら困るって言ってるようなもんだ」
「そだな!!」
が数秒、二人を眺めている間に、切島と緑谷が駆け出し、分厚い壁をぶち破った。
(…勢いがすごいなぁ)