第22章 日常
朝、起きて。
歯を磨く。
「環ー、今日お母さん遅くなるから夕飯作っておいて」
「…おはよう、うん、わかった」
昨日の夕飯の残りをお弁当に詰めて、いつもの電車に乗って。
学校へ行く。
「環!今週の週刊ステップ見た!?オールマイトのインタビュー載ってたよ!」
「…おはよう、まだ読んでない」
教室で育てている花に水をやって。
「じゃあ持ってきたから一緒に昼休みに見よう!」
「うん」
授業を受けて。
「環また明日!」
「うん、また明日」
家に帰る。
「ただいま」
暗い部屋に向かって、呟いて。
宿題に頭を悩ませる。
(…あ、まずい、こんな時間…!)
宿題に集中しすぎて。
夜ごはんの支度を忘れる。
慌ててお米を炊いて。
急いで冷蔵庫の中身を確かめる。
献立を決めて。
(…よし、できた)
一人で夜ご飯を食べる。
食器を洗って、湯船に浸かって。
ひと段落した夜22時。
「あー疲れた!環ー!お母さん疲れたよー!」
「おかえり。お疲れ様」
母が仕事から帰ってくる。
「お風呂沸かしてるよ」
「え、ありがとうー!入ってくるね」
「明日、火曜日で委員会だから少しいつもより遅くなるよ」
「わかったよー。でも私の方がきっと遅いね。お風呂の前にビールビール!」
お風呂につかりたい、が口癖の母は。
いつも疲れが溜まっているのか、ビールを少し口にして、ソファで眠ってしまう。
風邪を引いてしまわないように。
両親の寝室から毛布を持ってきて、母を包んでいると。
父が帰宅する。
「ただいまー。…お、環、まだ起きてたのか」
「おかえり。もう寝るところ。お風呂入ってるよ」
「あー。ちょっと今日はいいかな。すぐ寝るよ」
「じゃあお風呂抜いてくる」
「ありがとー」
お風呂の栓を抜いて。
リビングへ戻ると。
父が母の残したビールを片手に、テレビを見ている。
「ご飯、あるよ。食べる?」
「ん、大丈夫!遅くなるから食べてきた」
わかった、身体壊さないでね。
テレビを見て笑っている父の背に、そう言おうとして。
テレビの音の邪魔になるだろうから、口をつぐむ。
朝、起きて。
歯を磨く。
昨日の夕飯の残りをお弁当に詰めて。
いつもの電車に乗って。
学校へ行く。