第21章 足枷
綺麗なガラス玉のような彼女の瞳の中に、白炎がゆらゆらと燃えている。
きょとんとした表情で、は相澤を見上げたまま、数秒間、フリーズした。
まるで、相澤がはったりで口にした「公安」という言葉の意味を、測り兼ねているように見える。
返事を思案しているのだろう。
その短い数秒間。
相澤は彼女の白炎に、旧友の面影を重ねた。
「死んだらそこで終わりだ。だから、そうはなるな」
『ーーー。』
が返事を返そうとした時。
タイムリミットがきてしまった。
「くれぐれも気を緩めずに、各員の仕事を全うしてほしい!出動!」
一人の警察官が八斎會の呼び鈴を鳴らそうと、玄関先へ近づいた矢先の出来事だった。
堅牢な門が、内側からはじけ飛んだ。
そしてすぐ、門を内側から殴り弾いた張本人である一人の構成員が姿を見せた。
「何なんですかァ朝から大人数でぇ」
2メートルほどはある構成員の背丈を見て、一人の警察官が「ひっ」と小さく叫んだ。
圧力がかかるような大音量で声を発するその男の右フックで、盾を構えて待機していた警官数名が宙を舞う。
「助けます」
「大丈夫ですか!?」
イレイザーヘッド、緑谷がすぐさま反応し、投げ出された警官たちの身体を守りに走る。
先発として飛び出してきたファイター風の構成員は、目の前に立っていたへ殴りかかり、軽くその左フックをいなされた。
「もぉ~…何の用ですかァ!!」
『捜索令状が出ています。大人しくしてください』
男が再度、その拳に力を込め、へ振りかぶる。
その瞬間。
プロヒーロー リューキュウが進み出て、竜の姿へと変身した。
ガッ、という衝突音と共に、竜の固い爪が男の拳を真っ向から受け止める。
「とりあえず、ここに人員割くのは違うでしょう。彼はリューキュウ事務所で対処します。皆は引き続き仕事を。」
今の内に!という号令をかけて、リューキュウは男を巨大な二本の前足を使って叩き伏せた。
「ようわからんもう入って行け行け!!」
「サポート!!」
雪崩れ込んでいくプロヒーローと警官たち。
人の波に揉まれながら、切島が振り返って、クラスメートたちに声をかけた。
「行くか、緑谷!梅雨ちゃん麗日!頑張ろうな!」
「また後で!」