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イカロスの翼【ヒロアカ】

第21章 足枷











「辞職させてください」









単刀直入に。
相澤は、雄英高校現校長である根津にそう言った。
平和の象徴が失われ、その代わりに、彼の大切な生徒が一人、日常へと戻ってきた翌日の出来事だった。


「それは、どうしてだい?」
「俺は担任として相応しくない」


雄英を全寮制にする。
その決定通達を各家庭へ訪問し、伝えて回っている合間の短い時間を縫って、彼は校長へ直談判を行った。
沈黙が場を支配する時間が数秒間流れたのち、根津は、明らかに彼の全長とのサイズ感が合っていない校長席から飛び降りて、相澤の足元へと駆け寄った。


「私はそうは思わない。だから今まで通り、ヒーロー候補生たちを導いてやってほしいのさ」
「出来ません。パワー系の個性を持った担任が必要です。何があっても能無に対応できるようなヒーローが」
「警備体制は変える。そこはもう手を打ってある。その為の全寮制だろう?だから心配はいらないのさ。あのクラスの担任は、君につとめてもらいたい」
「USJも、強化合宿も、どちらの場にも俺がいた。俺が内通者だって考える人間もヒーロー連中の中にはいるでしょう。実際そう考えている保護者の方もいます。そんな状況で、親元から子を引き離すなんて道理は通らない。担任を変えて、雄英の印象を新しく、良くするべきです」
「もちろん印象は変えていくつもりさ。だとしても、君には雄英にいてほしい」
「俺が内通者じゃないと言い切れますか」
「言い切れないから、いてほしいのさ」


言葉に詰まった相澤を見上げて、根津は「ゆっくり、まずは座ってお茶でも飲もう」と、柔らかい手で相澤の足をぽてぽてと叩いた。


「…すみません」
「度重なる襲撃で、人一倍、責任を感じているのは知っているよ。ヒーロー科の生徒たちの親は、ヒーローが多いからね。USJの襲撃で君が襲われたように見せただけの内通者だと疑う保護者の方もいることだろう」


小さな手で器用にお茶の準備を始めようとした根津の手元から、相澤が急須と茶葉の缶を抜き取った。
俺がやります、という言葉を聞いて、根津はありがとう、と喜び、また駆け出しては、来客用ソファへと一足先に腰かけた。


「雄英からは誰も出さない。追い出したりはしないのさ」


そして、と。
根津はぽつり、と言葉を付け足した。


「その代わり、雄英は受け入れる」

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