第21章 足枷
―――AM8:30 決行
「礼状読み上げたらダ―ッと行くんで!速やかによろしくお願いします」
死穢八斎會、本部門前。
ガサ入れ決行日当日、大勢の警察官とヒーローが詰め寄せた。
「少しでも怪しい素振りや反抗の意思が見えたらすぐ対応を頼むよ!」
ヒーロー飽和社会といえど、ガサ入れなどの法的効力を持った活動権限を保持しているのは、治安維持の為、未だ国家権力の一翼として動き続けている警察官たちだ。
本作戦においても、ヒーロー達は武力的な補助要員に過ぎない。
「、おまえは俺と一緒に動け。緑谷、俺たちはナイトアイ事務所と一緒に動く。意味わかるな?」
『はい』
「はい!」
作戦開始直前。
相澤は、二人の生徒に声をかけた。
彼は、本作戦に関わっているインターン生達の保護役としてではなく、プロヒーローとして、本作戦の主要責任者であるナイトアイ事務所からチームアップの要請を受けてこの場に立っている。
(…インターン駆け出しのヒーロー候補生からしてみれば、明らかに大きすぎる案件だってのに)
そんな渦中へ身を投じようとしているにもかかわらず、声をかけられたと緑谷は、不自然なほどに自然体だ。
緑谷に関しては、ある程度説明がつく。
彼の経歴は、候補生1年目としてはあまりにも波乱すぎる事件歴が目白押しだ。
ヘドロ事件、神野事件、そして先日の林間合宿への敵連合急襲など、半強制的に「現場慣れ」させられた経験がありふれている。
異質なのは、彼女の方だ。
「ーーー」
『…はい、なんでしょう』
相澤から再度、名前を呼ばれたは、瞳の内に宿る白炎をくゆらせながら、視線を彼へと動かした。
ーーーいいかい、相澤くん。
相澤は、あどけない、年相応に見える彼女の顔の造形を見下ろした。
そして、根津校長とのある会話を思い出していた。