第20章 片道
「なんたって羨ましいからね」
『なんたって妬ましいからね』
声と言葉が重なり。
二人で顔を見合わせて。
意地悪く、カラカラと笑った。
「何時に出るの?」
『そろそろ帰るよ』
「えぇー--もう?」
大袈裟に残念がるホークスを見て、はクスクスと笑った。
静かに笑う彼女を遠くから見つめていた彼は、突如大きく羽を広げて、飛び上がった。
腰掛ける彼女の目の前へと降り立ったホークスは、ゆっくりと、自身の両腕と両羽を使って、彼女の身体を抱擁した。
「気をつけて。キミを信頼してるけど、危険はいつでも付きまとう。…今度会う時は、元気な顔を見せて?」
約束してほしい。
そう耳元で囁くと、彼女は笑うのをやめて、優しくホークスを抱き返してくれた。
『ありがとう。ホークスも無理はしないで』
「…今こんな話をすべきじゃないってわかってるんだけど」
「ヒーローなんて、ならなくても良いんじゃない?」
『―――――――――。』
ならなくてもさ、とホークスは彼女の返事を聞かないまま、つぶやくように話し続ける。
「俺、いつかキミが大きな怪我をして帰ってくるんじゃないかって心配で…情けないこと言いたくないけど、心配で寝れない時だってあるし、なんなら昨日だってそうだし?それに、その…ほら!ヒーローを目指さないってことで公安にいられなくなるんだとしたら、俺と暮らせばいいよ!一人じゃ生活できなくても、キミが嫌じゃなければ!部屋は意味もなくどでかいとこ借りてるし、いいと思わない?俺としては、もっとと一緒にいられたら最高だし!だから…えーと…うん……」
(だから、何が言いてえの⁉)
あまりにまとまりがない自分の話に、ホークスは勝手に、がっくりと肩を落とした。
『…わたしも』
「…え?」
『私も、一緒にいたい』
期待させるような彼女の言葉。
「ッだったら…!」
期待するホークスの唇に、人差し指をあてて。
彼女は困ったように笑った。
だから、と。
彼女は前置きをして、ホークスの期待を無残にも砕き切った。
『私は、ヒーローにならなくちゃ』