第18章 西へ東へ
それ、「脅し」かヒーロー?
雨に打たれながら、荼毘が不愉快そうに問いかけてきた。
ホークスはを片腕と片翼で庇うように抱えたまま、荼毘から鋭い視線を晒さない。
数秒の沈黙の後、荼毘が自身のフードに手をかけて、それを深く被り直した。
「…チッ。またな」
「この子に何をした?」
「眠らせただけで騒ぐなよ…少しすりゃ起きる」
ホークスは荼毘の姿が見えなくなってから、腕の中に抱き抱えているの顔を見下ろした。
これだけ身体を揺らされていても、彼女は起きる気配がない。
すやすやと眠っている彼女の顔を眺めて、肝を冷やした事件が始まらずに終息したことに安堵した。
急に崩れてきた天気から逃れるように。
ホークスはを抱き抱えたまま、自身の所有する高層マンションへと帰宅した。
「…元気な時は会いに来てくれないのに、何で具合が悪そうな時に来るかなぁ」
彼女をソファへと横たわらせると、雨で濡れた彼女の服がやけにひんやりとしているように思えた。
(心配で何もする気が起きん)
濡れた服をそのままにしておくわけにもいかないが、彼女は目を覚まさない。
自分と彼女は、勝手に着替えさせ合っていいような間柄ではないし、この家には自分以外の住人はいない。
八方塞がりだ。
(…ひとまず、髪を拭こう)
ソファに横たわる彼女の髪から、慣れない手つきで水気を拭き取っていく。
濡れた髪、顔、首を拭いて、ふと。
彼女の口元に目が止まった。
(ーーーー。)
目を意図的に逸らし、彼女の足、腕を拭いてから。
ホークスはため息をついた。
すやすやと寝息を立てている幼馴染をソファに残し、ホークスは自分がヒーローコスチュームを着たままだったことに気がついて、寝室へと着替えに行った。
雑にタオルで自分の頭を拭きながら、また彼女の隣に腰掛ける。
「、起きないと風邪引く」
反応がない様子を見て、またため息をついた。
髪だけでも乾かしてあげようと、ドライヤーを引っ張り出し、彼女の髪に風を当てた。
騒々しいドライヤーの音を聞き流しながら。
ホークスはじっと彼女を見つめ続け。
「………会いたかった」
人知れず、彼はそう呟いて。
ドライヤーの電源を落とし。
彼女の唇にキスをした。