第18章 西へ東へ
(……ホークスに連絡を…)
荼毘を巻いて、すぐに連絡をいれたいのに、発熱しているせいでその算段が浮かばない。
それどころか、荼毘の話がまともに聞き取れなくなってきた。
ぼんやりとした意識の中で、彼に対する集中力が解けていく。
『…待って、今具合悪いの。話はまた今度にしてくれませんか』
「当然眠いだろうな。さっき手を掴んだ時、手首に睡眠薬を打ったんだから」
『………え?』
「せっかくお互い知り合えたんだ。もっとゆっくり話そうぜ」
ぐらりと、彼女の視界が歪む。
心底楽しそうな笑みを浮かべた荼毘の胸へともたれかかるような体勢で、は倒れ込み。
そのまま意識を失った。
「おい待て」
急な土砂降りの雨を意に介さず、ゆっくりとに肩を貸すような姿勢で、ベンチから立ち去ろうとしていた荼毘の背に、声がかかった。
「その子をどうするつもりだ?」
「……なんだお前か、ホークス」
荼毘は振り返り、背後に立っている人影を確認し、ため息をついた。
「どうするも何も、お前より期待できそうな人材だ。だから連れて行く」
「どこへ」
「どこだっていいだろ。…全くこんな雨の中ご苦労なことだな。さすがにこの土砂降りじゃ空を飛べなくて、下に降りてきてたのか。ツイてねぇな」
「ツイてるさ。君が真面目にリクルートをしてる場面に出くわすなんてそうそうない。それに」
ホークスは荼毘の方へと近づき、から彼を引き剥がした。
「唯一連れて行かれちゃ困る子が連れて行かれそうになってる場面に出くわすなんて、今日の俺はツイてるとしか言いようがない」
「…奇遇だな。俺もソイツが気に入ったんだ。ソイツは何だ?どうしてお前が目をかける?」
「幼馴染なんだ。だから絶対にお前たちとは関わらせない」
「酷い言い草だな、仲間に入れてくれってせがんできたのはお前だろ。何で止める?幼馴染同士、同じ組織に属して過ごせたら楽しいだろうよ」
「雨が酷くて人が閑散としていても、この辺りには防犯カメラがある。彼女の捜索願が出れば、お尋ね者の居場所はすぐに明るみに出るだろう」