第2章 異なる日常
『大丈夫、ありがとう切島くん』
が切島を見つめたまま、そう言った。
『三人とも、部屋の片付けに戻っていいよ』
そう言う間も、切島の手に、女子の手が触れている。
緑谷、上鳴の視線が切島との手に釘付けになり、切島に至っては、彼の髪色と同じ色彩に顔を染めたまま、石化してしまった。
切島がから視線を逸らせずにいるのを見るに見かねて、上鳴が、かぼちゃとに触れている切島の腕を掴んで、力一杯シッペをした。
「あいだぁ!!何すんだよ上鳴!!」
「うるせーラッキーボーイ!とっとと部屋行くぞ部屋!」
「何がラッキーなんだよ、シッペされただろ!」
(さんの個性、ミッドナイト先生みたいな、フェロモン体質…だったりするのかな)
一瞬で恋に落ちてしまいそうだった切島と、に笑いかけられただけで、ソワソワとして落ち着かない病にかかってしまった上鳴。
自室へと向かっていく二人の背を見つめながら、緑谷は、また作業を再開したの方を振り返った。
『緑谷くん』
「あっ、うん。なに?さん」
『部屋は片付いたの』
「あぁ、ううん、まだ…」
『言われたことをすぐにやろうとしないのは、感心しない』
「…え?」
『イレイザーヘッドの施設見学の時も、今も。キミはここに立ち止まっているけれど』
部屋を片付けておいで、と。
は手を止めて、緑谷を見据え、もう一度そう言った。
(…………………あ、そっか)
なんだか、腑に落ちた。
彼女から感じる威圧感の理由。
(それは、彼女の神々しい容姿に起因している部分が大きいんだろうけど)
ーーーどうしたの?先生が呼んでるよ。
緑谷を見る彼女の視線には、おそらく、「彼女が重じているものを軽んじる相手に対しての怒り」のようなものが滲んでいる。
ーーー早く行きなよ。
彼女の言動を頭の中で反芻し。
緑谷は、聞いてみることにした。
「…さんって」
優等せ、まで言いかけた時。
がかぼちゃを手から滑らせ、自分の足へと落っことした。