第2章 異なる日常
マジ三途見えた、渡りかけた、と大袈裟に呼吸を繰り返す上鳴を見て、は『ありがとう』、と手短にお礼を述べた。
『キミも、ありがとう』
「えっ、あ、ううん。しまうの手伝うよ!」
『大丈夫、手伝わなくていい』
彼女は緑谷の眼を見つめて、言い切った。
はっきりとした意思表示をした後、無言でてきぱきと荷物を冷蔵庫にしまい始める彼女。
呆気にとられたように棒立ち状態となっていた緑谷と上鳴だったが、「おー!、いたいたー!」と助け舟を出すかのように駆け寄ってきた切島を仲間に加え、このなんとも気まずい状況を打破するため、みんな大好きお肉の話に話題を移行することにした。
「、これ焼肉の材料?誰かから聞いたのか?」
『イレイザーヘッドから聞いた。「今日の夜は焼肉だそうだ」って言われて、諭吉を2人預けられたから、買い出し行けってことかと思ったけど』
「うおマジか!迷惑かけたのに、相澤先生…ッ俺一生ついてく…!」
「でもなんでに?委員長とかに諭吉渡せばいいのに」
『部屋の準備そっちのけで買い物行こうとする人、出てくるからじゃない?さっきの眼鏡の子とか』
「おー確かにな。「みんな、焼肉の準備は俺に任せて、部屋の片付けを進めていてくれ!」とか言って張り切る飯田が目に浮かぶ…っと、そういやまだ自己紹介してなかったよな!俺、上鳴電気!よろしくな」
「そ、そうだった。僕は緑谷出久っていいます、これからよろしく、さん」
「おぉ、そうだった!切島鋭児郎、よろしく!」
名乗られた側のは、片付けの手を一旦止め、三人に視線を移した。
そして、ほんのわずかに口角をあげて、再度自分の名前を伝えた。
『ご丁寧にありがとう。です。愛想がないけれど、怒っているわけじゃないから』
どうぞ、お気軽に。
そう締めくくり、は軽く一礼した後、また黙々と戦利品の収納作業に取りかかり始めた。
彼女の微笑にドキドキが止まらない上鳴と、彼女が『手伝わなくていい』と言った時には、まだこの場にいなかった切島が、「「手伝う!」」と名乗りをあげた。
ガッ、とかぼちゃを掴んだ切島の手の甲に、がピト、と手を重ねた。