第15章 衝突
エコヒイキ。
爆豪だけが度々口にするその言葉。
この現状では、認めざるを得ない。
本試験中にも、参加者達は公安職員にデータを取られ続けていた。
利用できるデータなど、いくらでも手元にあるはずなのに、公安委員会はまたデータの取り直しをしようとしている。
この場で新たに得られるものといえば、「学校側からの前情報でも、試験中での情報でも得られなかったデータ」くらいだ。
つまり公安は、試験後に、新たなデータを取る必要性が生じてしまった。
公的機関がそんな決定をするほどに、危険な不確定要素を隠しているのは。
(…自分だけ、なのかな。二次試験に残った生徒は育てたいと言ってたはずの公安が掌返しをした理由も、たぶん…私のせいだろうなぁ)
この場を使って、公安は
の合否判定を、もう一度行うつもりなのだろう。
公安委員会というこの国の一大組織には、「二大派閥」というものが存在する。
ここ数年。
一方の派閥は、手塩にかけて育てたの「個性」を利用する方向に舵を切り。
もう一方は、の「個性」を幼い頃から危険視し、飼い殺す方向に向かおうと必死だ。
(仮免許の仮発行なんて曖昧な判定に留めたのも、平職員しかいない試験の場では、個性を暴発させた私の処遇を決めかねての苦肉の策だったんだろうけど…)
おそらく仮免試験後に、派閥の代表同士での会議が行われたのだろう。
この場でが個性を暴発させれば、その時点で「仮免許の仮発行」なんて例を見ない扱いは、すぐに取り消し処分となる。
そんな派閥同士の折衷案が、手に取るように見え透いた。
そのための「敗者不合格宣言」なのであり、他の参加者達は、負けたところで本当に脱落させられるわけではないはずだ。
ーーー次は、ないですよ。
の頭の中に、その言葉が蘇ってきた。
彼女は爆豪の背後に瞬間移動し、彼が振り向くより一瞬早く、自分の足に爆風でブーストをかけ、彼の背に重い蹴りを入れた。
弾き飛ばされた爆豪はすぐさま体勢を直し、空中戦も辞さないというように、へ殴りかかってきた。
爆豪の連打と、の瞬間移動が繰り返され。
もう一度彼女の蹴りが爆豪の脇腹に入る。