第2章 異なる日常
「さん、お部屋にもいらっしゃいませんでしたの。お買い物に出られたのかもしれません」
休憩がてら、リビングで涼んでいた緑谷と上鳴。
一向に発見の知らせが女子から届かず、1階エントランスを通りがかった八百万に確認したところ、そんな答えが返ってきた。
一つ屋根の下、共同生活をするとはいえ、それぞれのライフスタイル。
居ない時もあれば居る時もある。
「緑谷、施設見学行く前、ちょっとと話してたっしょ?話し方とか、どんな感じ?見た目的には可愛いっつーか超美しー!って感じだよなぁ」
「うん、すごく個性的な眼をしてるよね。話し方、とかは…」
ーーー早く行きなよ
ーーー何を考えてるの?
(…正直、威圧感がすごいような…かっちゃんに似ている気がする…なんて言わない方がいいんだろうなぁ)
緑谷が感じた彼女の第一印象は。
一言でまとめるならば、「近寄りがたい」。
しかし、緑谷の隣で身体をくねくねさせながら、「気が強そうだよな、はやく話してみてぇなぁ!」と騒ぐ上鳴を見るに、この印象は爆豪に苦手意識を持っている緑谷特有のものなのかもしれない、と思い直した。
「うん、僕も。もっと話して、仲良くなりたい」
「だよな!…お、噂をすれば!」
寮の玄関が開き、外からが買い物袋を持って現れた。
その荷物の多さにぎょっとした緑谷と上鳴が、バタバタと玄関に駆け寄った。
「うわっ、どしたん!?何そんな買い込んできた!?」
「手伝うよ!」
まるで、巨大な雪だるまを二つ肩に担ぎ上げているかのように、パンパンに膨らんだ買い物袋を4つ抱えている彼女。
器用に足だけで靴を脱いだ後、はじっと緑谷と上鳴を見て、呟いた。
『重い』
「しっかり重いんかい!なんでこんなに買っちゃった!?潰れるぞ、あとは俺に任せろ!」
「…あれ」
上鳴が大きな買い物袋に押しつぶされ、ぺしゃんこになった傍で、緑谷は個性を使っての荷物を半分受け取った。
「焼肉の買い出し?行ってきてくれたの?」
『うん。イレイザーヘッドが奢ってくれるらしい』
ありがたいねぇ、と真顔で呟いた彼女は、自分の残った荷物をダイニングテーブルに置いた後、コミックのように潰れたままの上鳴の上から、買い物袋を取り去った。