第4章 輪虎(りんこ)×幼馴染
出会ったあの日からしばらくは、輪虎と行動を共にした。
彼の落ち着いた優しい雰囲気が大好きで、
稽古中に見せる真剣な彼には幾度となく心を奪われた。
それと同時に、廉頗将軍への絶対の忠誠心に幾度となく嫉妬していた。
あんな真っ直ぐな瞳で慕われる廉頗将軍が羨ましくて。
「今、何を考えてるか、教えてもらってもいいかな?」
『…私、ずっと廉頗将軍に嫉妬してたなって』
そう口を開いて、彼の腕の中で目を閉じる。
最近は話す機会が少なくて、彼に話しかけられると緊張でどうにかなりそうだったが、でも、いざ抱き寄せられれば心地良くて…
時が、止まってしまえばいいのに。
『輪虎はずっと廉頗将軍の事を見ていたから』
そう言い終えて、彼の手当てが終わっていない方の腕をとると、包帯を巻いていく。
痛ましい傷はいつか治るし、彼が才に溢れた剣士だと知ってはいるけれど、それでも戦に出て欲しくないと思ってしまう。
そんな事は絶対に言えないんだけれど。
そして、包帯が巻き終われば、彼がクスクスと笑って、
「僕はいつも華の方を見ていたよ。きっと殿と同じくらいに。
華が庭で昼寝をしてしまった時、寝床へ運ぶのはいつも僕の役目だった」