第4章 輪虎(りんこ)×幼馴染
殿に出会い、屋敷で2日ほど過ごした次の朝、
寝床に腰をかけ、亡くなった妹の事を考えていれば、急に開いた扉から殿とまだあどけない華が入ってきて…
まだ大人になっていないとは言え、彼女が綺麗な顔立ちをしている事に胸が高鳴った。
「えっと…この、方は?」
「おー!輪虎!起きておったか!
此奴はお前と同じ歳の華だ!この屋敷を案内してもらえ!」
『あなた、輪虎っていうの?ふふっ!
私は華。ほら、遊びに行こう!』
そして、華は、そう殿のように強引に僕の手を引いて屋敷を駆け回ったのだ。
あの笑顔が今も忘れられない。
あの笑顔だけでない。
一緒に剣の稽古をした時も、一緒に馬に乗った時も、いつだって華は笑顔だった。
そして、その笑顔が僕にだけ向けられていると気付くのにも時間はかからなかった。
ふとした時には彼女と目が合っていた。
それがたまらなく嬉しくて…
でも、殿に拾っていただいた恩は絶対に返したくて、
殿との稽古に集中するために、彼女への想いを何度忘れよう思ったか…。
だが彼女に会いたいという想いで、乗り切れたこの戦。
今、僕の腕の中にいる華無しでは、僕は本気で戦えないと、そう気付いてしまったんだ。