第1章 嬴政(えいせい)×新人宮女
『せ、政様…』
そう私が呼べば、政様はフッと笑って私を寝床に座らせる。
夢、みたい。
政様に触れられた頬が熱い。
「ここには、慣れたか?」
『は、はい!皆さん、優しくしてくださって』
「そうか…
出来れば、様を付けずに…政と呼んでくれないか」
『へ!?そ、そんな!えっと…』
だ、大王様を呼び捨て、だなんて…!
でも、大王様は政様で…えっと…どうしたら…
大きく鳴り続ける自分の鼓動。
聞こえてしまったらどうしよう。
っ!
でも、きっと政様が私を呼んでくださるのは今日だけ。
たった一度だけ。
政様が大王様と分かった以上、もうこの先会える日はきっと来ない。
よしっ!
そう決意し、口を開くと、
『分かりまし…』
「いや、すまない…」
政、と同時に話してしまう。
うっ、うそー!
やっちゃった、かな…
そう彼の方を向けずにいると、再び頬に温かい感触。
安心してしまう。
あぁ、今夜しか会えないのに。
「続きを」
『……分かり、ました。お呼びします。政』
この人の事が、どうしようもなく好きだ。