第3章 蒙恬(もうてん)×湯女(ゆな)
最初の日に言ったこと、そんなの覚えてるに決まってる。
覚えてるけど、今はそれどころじゃない…!
横向きのまま彼に抱き寄せられたせいで、私の耳はきっと、蒙恬様の心臓の真上にあるのだ。
耳に流れてくるのは、明らかに速い蒙恬様の鼓動。
身体が熱いのに、離れたくない、なんて…
「ははっ、覚えてないの?」
『お、覚えております!忘れるわけありません。
蒙恬様した会話は、どんな会話でも……忘れたく、ありません』
「…華?」
『あ…うぅ、い、今のは!忘れて下さい!!』
そう腕に力を込めて離れようとするが、彼の力には敵わず、結局口元を隠して目をつぶる。
あぁ、なんてこと…
これじゃあ"好き"と告白したようなものだ。
明日から蒙恬様に会えなくなるのは、不幸中の幸いかもしれない。
「この戦から帰って来たら、本当にそうしよっか」
本当に…って、
『なっ…そんなの、無理ですよ』
「無理じゃないよ?」