第3章 蒙恬(もうてん)×湯女(ゆな)
何が起こって…?
掴まれた手はそのまま蒙恬様の口元へ運ばれて、チュッというリップ音と共に口付けが落とされる。
口付けされた指先が熱を帯びていく中、その奥の彼の表情から目が離せない。
基本はニコニコしていて、たまに考え事をする時に真剣な顔をしていたのは見てきたが、彼の辛そうな顔を見るのは初めてだったから。
「明日から暫く戦に出るよ。
僕に会えなくなるからって泣いちゃダメだよ?」
『蒙恬様…どうか、御無事で…』
「あぁ、それは大丈夫」
『え?……な、なら、どうしてそんなにお辛そうなのですか?』
てっきり、いつ命を落とすか分からない戦場に出るのが憂鬱なのかと思っていた私は、彼の軽い、でも確かに絶対の自信のこもった返答に目を見開いてしまう。
私、戦のこと、何も知らないんだなぁ。
思わず目を晒せば、濡れた彼の腕が私を引き寄せてぎゅっと抱きしめて、
「初めて会った時、僕が何言ったか覚えてる?」
そう言ったんだ。
明らかに声色はいつも通りに戻っている。
けど、抱きしめられているために表情は見えなくて