第3章 蒙恬(もうてん)×湯女(ゆな)
彼の美しい見た目と反する士族という一族の名に、胸が詰まるような思いを飲み込み、彼の腕を持ち上げて洗っていく。
この方も戦に出れば、戻ってこられるか分からないなんて…。
引き締まった彼の身体に高鳴ってしまう鼓動。
なるべく、見ないようにしなきゃ…!
そう、もう片方の腕を洗おうとすれば、
「っ!痛ぁ…」
と、明らかに顔を歪める蒙恬様。
『も、申し訳ありません!…痛み、ますか?』
そう彼を覗き込めば、次の瞬間には口角が上がり、痛がっていたはずの腕で私の身体を引き寄せる。
『ひゃっ!?』
「ぷっ…嘘だよ?」
『えぇ…』
「君、さっきから固い顔しちゃってー
そんなに僕の傷が痛ましい?」
腰に回された腕は解けず、彼の顔はすぐ目の前というだけでも目を見開いてしまっていたのに、心の内まで見事に言い当てられ、開いた口が塞がらない。
触れられている場所が熱い…
「図星〜?まあしょうがないかぁ」
『あっ!いや、その!傷が痛ましい、というよりは…
今後もこのような傷が増えるのかと思うと、信じられなくて…』