第10章 レモンティー同盟【黒尾鉄朗】
「そ、それって……」
「ん?」
「黒尾くん、私の事……好き、なの?」
俺は壁に手をついたまま、身を屈めて苗字の顔に近付く。
今にも唇が触れそうな距離に、苗字は顔を真っ赤にさせて羞恥心に耐えるように目を瞑っていた。
「名前は俺の事、好き?」
「……えっと」
「俺は、中2の頃から好きだよ」
「えっ……」
「相談に乗ってくれたよな、あの時」
ーーー
『私は陸上部で個人競技だから……バレーのチームの繋がりって、お世辞無しで本当にすごい物だと思うんだよね』
『その繋がりをチームメイトにウザがられてんだろ……お節介すぎだよな、俺』
『黒尾くんが自信無くしたら駄目だよ!黒尾くんから皆と繋がらないと!皆が繋がって、皆で繋ぐのがバレーなんでしょ?』
ーーー
中学の時の、苗字の言葉が甦る。
「嬉しかったよ……名前のあったけぇ言葉が」
30センチ下の苗字の目線に合わせて、可愛い耳に唇を近付けて囁いた。
「……わ、私も……」
苗字がゆっくりと口を開く。
「私も……黒尾くんが好き、だから」
大きく目を開いて俺を見つめて言ったのが可愛くて、たまんなくて……
そのまま名前に、初めてのキスをした。
「んっ!」
「お前、ほんっと可愛い……名前」
唇を離して、名前の長くてサラサラの黒髪を撫でる。
髪に指を通して根本から毛先までスーッと鋤けば、気持ちの良い指通りが癖になりそうだった。
「こういう俺、嫌い?」
「き、嫌いでは……無い」
「俺、結構がっつくタイプなんだよネ」
また耳元で囁いてやると、分かりやすく頬を赤らめる名前。
男慣れしてねぇから、ひとつひとつ必死で俺に反応するのが愛おしい。