第10章 レモンティー同盟【黒尾鉄朗】
苗字は同じく俺のクラスメイトで、音駒高校の現生徒会長。
そんで、同じ中学校出身。
文武両道、人望が厚くて美人ときた。
完璧な苗字は少し近寄りがたい高嶺の花タイプたが、さっきの着替えといい少し抜けた所もある事を俺は知っている。
何でかと言えば、中学の頃から俺は苗字に片想いしているからだ。
中学のバレー部、部長になりたての頃は思うように部が纏められなかった時期があった。
中学でも生徒会長だった苗字は、その時俺の力になってくれた。
高校も同じになったからモノにしてぇと思ってはいたが、そのうち俺に彼女が出来たりして……。
まぁ本気だった訳じゃねぇし、部活ばっかり!とか言われて割と早く別れたが。
俺はバレー部、苗字は生徒会。
お互いに忙しくて、何一つ動きが無いままもう3年だ。
よく聴く、諦める恋あるあるになりかかっている。
「作業で汗かいたからって、そもそもこんな所で着替えてたのが悪かったんだよね……」
「もう忘れっから。ぶり返させんなよ」
好きな女の下着姿を見てしまった男子高校生に、忘れるなんて芸当は出来る筈も無いが。
上半身下着姿が脳裏から離れない俺に構わず、苗字は話し掛けてくる。
「ミオを手伝ってくれたんだよね、黒尾くん。ありがとう」
苗字は閉めていたカーテンを開けながら言った。
昼の高い太陽光が一気に入り、苗字に逆光が射した。
「ああ、重そうだったしな。行事の準備か?」
「うん。球技大会」
「あー。バレーの審判頼まれてたヤツな」
「そう、よろしくね。黒尾くんって中学の頃からしっかりしてて頼りになる部長だよね」
部長会議で、球技大会でやるバレーの審判を依頼されたのは、ほんの1週間前だった。
生徒会長の苗字が仕切って行われる部長会議。
その他にも全校集会や学校行事の時、苗字は高校生に見えない程に大人びて凛としている。
だがそれは、生徒会長としての苗字。
クラスでは女子同士でキャアキャアはしゃいでたり、たまに授業中ぼーっとしてたりして、案外年相応な部分もある。
俺は苗字のそういう所も気に入っていた。