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【ハイキュー!!】短編集~Mint tea~

第9章 バンドガール・ラバー【澤村大地】




***


それからは名前や彼女の周りに変わった事は無かった。

あっという間に春高一次予選、夏休みが終わり、文化祭当日を迎えた。


クラスの出し物の分担を終えて、俺はスガ、旭と共に第二体育館へと急いだ。
バンドが奏でる重低音が、体育館の手前から響いてくる。



「名前のバンド、順番最後だから間に合ったな!」

「お~、盛り上がってんな!」

第二体育館は軽音部のライブによって、熱気に包まれていた。

スポットライトも用意され、いつもここでバレーをしているとは思えない、非日常な世界が広がっていた。



ステージの前方には、演奏中のバンドを盛り上げている他の軽音部と、ノリの良い元気組や外部来校者でゴチャついていた。

そういう雰囲気があまり得意では無い俺達3人は、体育館の後方に立つ。




「お、出てきた!名前だ!」

スガがステージを指差す。

「トリを勤めさせてもらいます『POISON APPLE EATERS』でーす!よろしくー!」


制服姿の男女5人組がステージの袖から出てくる。
名前は華奢な肩から、重厚な黒いエレキギターを掛けていた。

名前のバンドの演奏が始まった。



「あ、これ俺と名前が好きなバンドの曲!」

旭が嬉しそうに言う。


「きゃー!名前ー!!かっこいー!!」

「ハヤトー!いいぞー!!」

観客の声援はこれまで以上の盛り上がりを見せる。




「なぁ、苗字さんってさ……めっちゃ良くない!?」

「可愛いし、歌もギターもサイコーじゃん!チャラい感じかと思ってたけど、拘りあってかっこいい系!?」

「えー、後夜祭でイってみちゃうか!?」

俺たちの前の列にいる奴らが、大きな声で話しているのが聴こえた。




───なんでだ、なんか嫌だ……。



ここにいる男共、皆名前目当てなのか?

しょうもない思考が頭をよぎる。



「どんどん行くよー!!ついて来てねーっ!?烏野祭ぃーっ!!!!」

「「イエーイ!!!!」」


悶々とする俺とは対照的に、名前はステージの上で輝いていた。

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