第9章 バンドガール・ラバー【澤村大地】
勉強会をした数日間、俺は苗字と毎日一緒に家に帰った。
期末テストが終わった後、
「2人が教えてくれた所、テスト出たねっ!」
と、心から嬉しそうに言う苗字を見て、勉強会の甲斐があったと感じた。
初めは旭の所に行くついでだったが、テスト以降も苗字と話をする機会が自然と増え、どんどん仲良くなった。
いつしか昼休みに4人で談笑するのが、俺の楽しみになった。
知り合ってからまだ日は浅いのに、いつの間にか下の名前で呼び合うようになっていた。
そして、お互い砕けて話せるようになって、新しい発見もあった。
「私さ、実は小心者なんだよね。童顔だし、見た目だけでもワイルドになれたらかっこいいバンドガールになれるかな、ってさ……」
名前が制服を着崩したり、アクセサリーを色々着けている本当の理由が分かったのだ。
「ぶふっ!それって旭のヒゲと同じ理由じゃん!!」
「え!?スガちゃんそれマジ!?」
「旭はヒゲだけど、本当はへなちょこなんだぞ」
「大地……俺には本っ当厳しい……」
「ていうか名前、お前が小心者ってのは絶対勘違い!」
「えー!?」
名前との無駄話は、毎日バレーに打ち込む俺たちには新鮮だった。
いつしか旭のクラスに行く目的が、名前になっていた。
***
名前と出会って1ヶ月が経った。
初めての東京遠征が終わり、夏休みは間近に迫る。
そんな、ある土曜の練習日の事だった。
ロードワークに行く前の柔軟を部室棟の前で行っていると、すぐ隣の文化部の部室棟から怒鳴っている男の声が聞こえてきた。
「オイコラ、名前っ!!てめぇ調子乗んなよ!?」
名前の名前が耳に入って振り向くと、いきなり軽音部の部室のドアを足で蹴破って外に出てきた奴が居た。