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【ハイキュー!!】短編集~Mint tea~

第8章 息をしていて。【菅原孝支】




フッと笑った孝ちゃんの顔を見て、私も思わず顔が綻んでしまった。


「……名前、やっと笑った!」


目を細くして笑った孝ちゃん。

いつもは丸くて可愛い目だから、たまにこうやって細めるとドキンとしてしまうんだ。



孝ちゃんと一緒にやった、林間学校の実行委員。

レクの内容を一生懸命考えて盛り上げて……
準備や片付けも大変だったけど。

レク中のアナウンスを何度もミスする私に、優しく教えてくれた孝ちゃん。




『名前の頑張り屋なとこ、結構好きだ!』

最後の夜の、キャンプファイヤーの光に照らし出された孝ちゃんの言葉と笑顔は、忘れる筈が無い。




「あん時も言ったべ?頑張り屋の名前が好き、って」

気付けばさっきまでの涙は止まっていた。



「名前……」

孝ちゃんは低い声で私を呼んだ。




「俺……いつも頑張り屋で、一途で可愛くて、でもちょっぴりドジな名前が大好きだよ。

だからさ……」



孝ちゃんが私の髪を一束すくった。



「俺だけの……お姫様になってよ?名前」



そう言うと孝ちゃんは、私の髪に優しい優しいキスを落とした。


孝ちゃんに好かれたくて伸ばしてた髪。

触れてもらえて嬉しかった。

胸がきゅうっとして、身体が熱い。



バーゲンの掘り出し物なんかどうでも良い。

孝ちゃんとずっと居られるなら、そんなもの見つからないといいなって思った。



「私の王子様は……孝ちゃんだけだよ?」



ショッピングモールは初売りバーゲンでかなり混雑していた。


元旦で浮き足立っている行き交う人たちは、買い物に夢中で……

隅っこのベンチにチョコンと座る私たちなんて、誰も見ていなかった。



毎年繰り返されるこの風景、毎年孝ちゃんと足を運んでいるこの場所。

今年でもう六回目だ。



目を閉じた孝ちゃんの、唇が近付いてくる。


二人が初めてのキスをしたのは、そんないつものお正月だった。

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