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【ハイキュー!!】短編集~Mint tea~

第8章 息をしていて。【菅原孝支】




***


「やっとそういう事になったか」


数日前の孝ちゃんとの事を報告する私に、開口一番、澤村くんが言った。



春高の応援に来ている私は、東京体育館のスタンド席に居る。

椿原戦を制した後、他の学校の試合を見ているバレー部にちゃっかり混じらせてもらっている。



「ホント。やっと、って感じだ」

「むしろ今までがどうした、ってな」

潔子ちゃんと東峰くんも口を揃えた。



「な?見事なまでに皆にバレバレだったってワケだ!」

と、孝ちゃんまで……。

「そうだったんだ……恥ずかしいな」



伸ばした長い髪を孝ちゃんが撫でてくれる。


「名前、髪、切らないの?」

「孝ちゃんは長いのが好きなんでしょ?」

「うーん……名前はどっちが好きなの?」

「どっちかと言えば、短いの……かな」

「じゃあ切って!短いのも絶対可愛いよ」


毎朝電源を入れていたアイロンに、心の中でお疲れ様、と私は言った。


そんな私達の様子を見てた澤村くんが席を立って、東峰くんと潔子ちゃんを連れてどこかへ行ってしまった。



「あ、気遣われたな」

ハハハ、と笑った孝ちゃんが愛おしかった。


「ねぇ孝ちゃん」

「んー?何?」

「耳貸して?」


内緒話をするフリをして、私は孝ちゃんの頬に軽く口付けた。



「名前っ!」

「元旦の時のお返しっ」

いつも余裕な孝ちゃんが、顔を赤くして驚いていたのが新鮮だった。



「試合、すっっごい!かっこよかった!!」

「惚れ直したべ?」

「えへへっ!」

「見てろよ。絶対、全部勝つから」


強く意気込んだ孝ちゃんの頼もしさに、私の左胸はまた速まった。



「王子様は無敵だもんねっ」

周りに聴こえないように、私は彼の耳元で囁いた。




隣で孝ちゃんが、息をしているだけで好きなの。

私は相も変わらず、息するのも大変なくらいドキドキしている。


お姫様は近いうちに、救急車を呼ぶ羽目になるのかしら?



恋人繋ぎをされて絡まり合った指が、ほどけていないか私は何度も確かめた。




END

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