第8章 息をしていて。【菅原孝支】
「いいよ。俺、名前が好きだから」
「え……?」
「俺、名前の事、只の幼馴染みなんて思ってないから」
「……嘘だ」
「嘘言うかよ」
「だ、だって……」
真剣な態度に、顔が段々と火照ってくる。
孝ちゃんにじっと目を見つめられて、何も言えない。
「それとも……俺じゃ、名前の王子様になれないの?」
孝ちゃんが不意に、私の手を掴んだ。
「そ、そんな事……」
軽く目を伏せた孝ちゃんは、私の手の甲にキスを落とした。
「っ!?」
「これで信じてくれた?」
顔から火が出そうだ。
急な展開に頭がついていけない。
「名前も俺の事、好きなんだろ?いい加減、素直になれよ」
「うっ」
「バレて無いとでも思ってた?」
耳元で低く囁かれて、眩暈が起きそう。
「……す、好きです」
「だよな。昔から分かりやすいからな、お前」
胸のドキドキが、私に呼吸を忘れさせてるみたいだった。
「名前の事、中二の時からずっと好きだよ……俺」
「え?」
私と同じだ。
「孝ちゃん……中二って……」
「「林間学校!(?)」」
孝ちゃんと私の声が重なった。