第8章 息をしていて。【菅原孝支】
「分かってる!ありがとね、付き合ってくれて」
「掘り出し物、あるといいな」
「うん……」
孝ちゃんと私のお正月恒例、初売りバーゲン。
主に私の服を買うわけだけど、文句言わずに毎年一緒に来てくれている。
「孝くんにアドバイスしてもらうと、可愛いの買えるわね~」なんて、うちのお母さんからもセンスを信頼されている。
「これ可愛い~」
「それより名前は暖色系が似合うんじゃね?」
「どう?似合う?」
「んー!丈短い!危なっかしい!」
女の子の服なのに、孝ちゃんはいつも的確なアドバイスをしてくれる。
おしゃれ通の東峰くんと、そういう話でもしてるんだろうか。
「あ、名前。だいぶ混んできたから、手ぇ繋いどくか?」
「……孝ちゃん、私子供じゃないんだよ」
ホント私ってバカ。
差し伸べられた彼の手が恥ずかしすぎて、つい出てしまった言葉に嫌気が差す。
絶対、可愛くないって思われた。
「あっ!」
突然、視界が斜め下へと傾く。
履いていたヒールで足を挫いてしまったのだ。
「名前、どうした?」
「足、挫いた……」
「平気か?」
直ぐ様、私の腕を掴んでくれる孝ちゃん。
「あれ?靴擦れもしてんじゃん」
少し前からパンプスが擦れる踵が痛かった。
困らせたくなくて黙ってたのに。
目敏い孝ちゃんは、私の踵の方に目をやるとすぐにそれに気が付いた。