第7章 繋がる心【澤村大地】
「試合、悔しかった」
「……ああ」
「もう12月だよ。水被ると風邪引く」
「……ああ」
「泣いてたでしょ?」
「……泣いてねぇし」
「私には本当の事、言ってよ」
「……泣いてた」
いつもの澤村だった。
それだけの事が、こんなにも嬉しい。
「「あのさ!」」
澤村と私は同時に口を開いた。
「苗字、先に言って」
「……いいの?」
「……レディファーストだ」
目の周りを赤くした澤村が言う。
「ぜってぇ上手くいくから」という、試合前のクロの言葉を思い出す。
(ありがとう、クロ)
「……澤村はさ、今日の大会が終わったらバレー部辞めるって言ったけどさ……」
「……うん」
「私、バレーやってる澤村が好きだよ」
泣くのを我慢して、声が震えてしまう。
「苗字……」
「私……まだ澤村がバレーするとこ見てたいよ。
まだ澤村と一緒にバレーやってたいよ。
まだ澤村と一緒に居たいよ……!
もっともっと、バレーで笑顔になってよ!
もっともっと、私の事も笑顔にさせてよ……!
今よりもっと練習して……次は勝とうよっ!!
だから……
バレーやめんなぁーっ!!澤村ぁーっっ!!」
私は目から大粒の涙をボロボロ流し、心のままに叫んでいた。