第7章 繋がる心【澤村大地】
目一杯練習したサーブが気持ちよく決まった澤村は、目を見開いて雄叫びをあげた。
「っしゃああああっ!!」
チーム全員がわぁっと沸き立つ。
「澤村……っ!!」
私は熱い涙を止められなかった。
嫌だよ、澤村……。
まだ澤村のバレー、近くで見てたいよ。
バレーやってる澤村が、好きだ。
結果的に試合は負けてしまったが、皆はさほど悔しそうにしてはいなかった。
私は「大学のサークル」という緩さに慣れてしまっていたけど、今回だけは悔しかった。
澤村の最後の試合は、勝利が良かったから。
もっともっと、マネとしてサポート出来る所があったかもしれない。
悔やむ事しか出来ない自分が、とても小さく感じられた。
試合後のミーティング中、澤村は頭からタオルを被って俯いたままだった。
じきに、皆が撤収準備をしてガヤガヤし始める。
私は大学へ戻る前にドリンクボトルを軽く濯いでおこうと、会場の中庭にある水道へと向かった。
「……クソッ!!」
水道にいた人影は、うちの大学の青いユニフォームだった。
頭から水を被っていたその人は、澤村だった。
「……さ」
呼ぼうとした声が出なくて途切れてしまう。
すると、側で立ち尽くしている私に澤村が気付く。
「……苗字?」
澤村の方から私に気付いてくれた事に何故か安堵した。
私は1つ息をつくと、澤村のすぐ隣の蛇口を捻ってボトルを洗い始めた。