第7章 繋がる心【澤村大地】
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「それが3日前」
試合前の待機中であるクロに、私が抱いていた気持ちをすべて吐き出した。
「……そうか。サームラがそんな事をねぇ」
澤村は今日の大会が終わったらバレー部を辞めると私に言った。
「だから……今日の大会終わったら……澤村、辞めちゃうよっ」
私は泣きそうになるのを必死で堪えて、クロに訴えた。
クロと私が話している間、澤村は誰と話すでもなく、目を閉じてこれから始まる試合に向けて集中力を高めていた。
「名前はやっとサームラへの気持ち、気付けたんだよな?」
「……うん」
「名前のありのままの気持ち、アイツに伝えろよ。ぜってぇ上手くいくから、もう心配すんな」
「……うん。ありがと」
3日前の出来事以降は、私も澤村もこの話題に触れていない。
講義中も練習中も、お互いに何も感じてないフリをしていた。
だから澤村の顔を見てるだけで、辛かった。
「ま。俺は、1年の時からお前ら見てて分かってたけどな」
「え?「よし!そろそろアップとるぞー!!」
クロとの会話中に、主将の号令によって声が掻き消された。
すぐにコートへの移動が始まる。
それからは固唾を呑んで試合を見守った。
これが澤村の最後の試合……そうなってしまうのか。
今日は澤村もクロもスタメンで、もう後がないピンチの場面で澤村のサーブ。
「澤村ー!ナイッサー!!」
今日は何度目かのサーブだが、これまでは相手チームに拾われてしまっていた。
その時、集中しきった澤村から、3日前私に見せてくれたあの精度の高い強烈なサーブが打たれる。
それは相手から、サービスエースを奪った。