第6章 17歳の君が好き。【澤村大地】
澤村が握ってくれた手が熱を持つ。
そろそろ手汗が気になって離そうとすると、スルリと追いかけて来る大きくて骨張った手。
あっという間に指を絡ませてきて、恋人繋ぎの形になった。
「澤村、手……恥ずかしいよ」
「もうちょっと、このままでいたい」
「……澤村、顔赤い」
「名前も赤いよ」
「え、いま名前って……」
「嫌だった?」
「ううん。嬉しい」
余裕っぽく振る舞う様に見せかけて、赤い顔を隠す。
男子っぽい、可愛さ。
「名前も、名前で呼んでよ」
耳元で囁かれて、オーバーヒートしそう。
「……大地……さん」
「後輩かよ」
「だ……大地」
「よくできました。名前」
大きな手で頭を撫でられて、もう何も言えない。
「辛くなったら……すぐ言えよっ!」
でもそれを見透かされたくなくて、照れ隠しに吠える私。
「俺の台詞だわ……かっけぇな、名前」
「春高予選、応援行くからっ!!彼女予定枠の最前列席、用意しといてねっ!!」
「おう!!」
私と大地は、そのまま昼休みが終わるまで二人だけの時間を過ごした。
まだ恋人にはなれないから。
今は、友達として学校にいる間だけが二人の時間なんだ。
伝えきれない事、一緒にできない事、沢山ある。
そのもどかしさは……
なんて、愛おしい時間なんだろう。
喋ると上下に動く喉仏を眺めていると、
「男は皆こうだろ」
と不思議そうに言われた。
「大地の男らしいかっこいい声を発して動いてるのがいいの!あと、女子は結構フェチ率高い!」
と返すと照れていた。
これだけは恋する乙女にしか理解できない、胸キュンポイントだ。