第6章 17歳の君が好き。【澤村大地】
「私……本当はもっと、色々落ち着いてから言うつもりだったのに。澤村に……そうさせられた」
「そっか。
俺もだよ。
俺も、そのつもりだった」
ざぁ……と急に風が強く吹いた。
初夏の生暖かい風が、私と澤村の間を吹き抜ける。
「……ほ、本当に?」
「うん。苗字の事、俺も好きだ」
夢なのかと思った。
さっき私が澤村に対して“友達”と言った後に見せた、寂しそうな表情の理由。
こういう事だったのか、って思ったら、余計に顔が熱くなってくる。
「だからさ、待たせちゃうけど……春高も入試も終わったら……
俺の彼女になって欲しい」
ずっとずっと片想いしていたハートがキュッと締め付けられる。
両想いだったらいいな、なんて……
澤村の事を考えてる時に妄想したりして……
でもそれが、本物で。
相手の事を、真の意味で大切に想う。
その尊さがまさに今、このハートに潤いを与えている。
目から自然に熱いものが流れてきた。
「……う゛んっ……!」
「お、おい!泣くなよ」
「だって……嬉しくてぇ!ずっと、見てたんだからぁ……!」
「苗字……」
「カッコ良すぎだっ!澤村のバカぁ!!」
「ありがとな」
「うぅ……その声も、喉仏も、好きだっ!!バカぁ!!」
「喉仏?ハハハ、サンキュー」
澤村は泣きじゃくる私の手を握ってくれた。
私の手をすっぽり包み込む、安心する暖かくて大きな手。
「苗字さ、志望校どこ?」
「……ぐすっ、R大の文系……」
「じゃ俺も今日からR大の文系志望」
「え?なんで……いいの?」
「そこってバレー部あるよな。あと俺、大学自体は拘りとか無いから何処でも良かったし。偏差値もちょうど良いべ?」
それに県内で公立だしな!と、澤村はニカッと笑った。