第1章 キスから始まるストーリー【澤村大地】
「……んっ、ん、はぁ……」
その日から、苗字と俺との秘密の関係は始まった。
チャンスがあるといつもの空き教室に入り、キスをする。
幸いその教室は人通りの無い廊下に面していて、今まで出入りを見られてしまったことは無い。
親友のスガや旭にも、当然話していない。
3年生になっても苗字とは同じクラスで、素直に嬉しかった反面、複雑な部分もあった。
俺たちは特に付き合う訳でも無く、変わらず只の友達という関係だったからだ。
苗字も、付き合ってとか、好きとか言ってこないし、俺が部活に行く時間になればその日は終了。
一緒に帰ったり、休みの日に会う訳でも無い。
クラスでもいつも通りだし、未だに名前呼びもしていない。
先にも後にも進めない関係に、俺は悩んでいた。