第1章 キスから始まるストーリー【澤村大地】
「……え?」
俺だって健全な男子高校生。
好きな女子に2人きりの教室でそんな事を言われて、自制が利く訳が無い。
「……好きなの、澤村くんの……」
「え」
「……唇が」
「……うん?」
唇が好き、って言われて嬉しく無くはないけど、そこは「澤村くんが好き」だけで良くないか?
でも片思い中の苗字と急接近できる千載一遇のチャンス……あ、でも俺ファーストキスだ。
今まで部活ばっかりやってたからじゃんダサ、って引かれねぇかな。
うわ、しかも今日の昼飯、弁当に餃子入ってたじゃねーか!うわー、どーしよー!
と、一瞬のうちに様々な感情で頭が埋め尽くされ、ショートしそうになった。
目の前にはどこか期待しているような、少し紅潮させた頬をしている想い人もいる。
何も言えず、おそらく赤い顔をしていた俺に、苗字は初めてのキスをくれた。
唇同士が触れ合うだけの、柔らかくてとても優しいキスだった。
「……ごめん、我慢出来なかった。あ、もしかして、初めてだった?」
上目遣いで俺を覗き込む苗字が視界に入り、俺は顔が火照った。