第6章 17歳の君が好き。【澤村大地】
「……苗字、サンキュー」
澤村が不意に、少し空いた私との距離を詰める。
「えっと……さ、澤村って要領もすごくいいもんね。勉強法も良いの知ってそう。私だったら両立は出来ないけどさ」
二人の距離を縮められた緊張がバレないように、私は無駄口を叩く。
「苗字はさ、何でそんなに俺の事応援してくれんの?」
“好きだから”とはまだ言えない。
澤村の部活や受験を邪魔したくない。
「……そりゃ、友達が奮闘してんだもん。応援するよ」
「……そっか。嬉しいよ」
澤村は眉を下げ、少し寂しそうに言った。
「……澤村。無理、してない?」
「?してないよ。何で?」
「スガちゃんも澤村も……そうやって、いつも周りの期待に応えてる」
「そうか?」
「部活も勉強も妥協しないじゃん。何かを好きでいる事だって、楽じゃないしさ。疲れない?」
澤村の目が私を真っ直ぐ見つめる。
「苗字」