第1章 キスから始まるストーリー【澤村大地】
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「おっ、苗字。2年も同じクラスだな」
「本当だ。澤村くん、またよろしくね」
1年の時から同じクラスだった苗字とは席が近く、中学までバレー経験があった事もあり何かと話が合って、クラスで1番仲の良い女友達になった。
そんな苗字の事を好きになるのに、時間は掛からなかった。
「なぁ、苗字。マネージャーの件、マジで考えてよ」
「ごめんねー。高校では部活やらないって決めてるんだ」
1年の時から何度かバレー部のマネージャーをやって欲しいと打診してきたが、苗字の答えはいつもノーだった。
クラスで俺と話す時は、他の男には見せないような屈託のない笑顔を見せてくれる。
俺のことを嫌いな訳ではないとは思っていたが、部活で忙しい俺が苗字の事を幸せにできるのだろうかと悩み、なかなか告白の機会を持てずにいた。
何もないまま3年生になろうとしていたある日、苗字と俺は一緒に日直当番をこなしていた。
放課後の2人きりの教室で日誌を書く俺に言った苗字の言葉が全ての始まりだ。
「……ねぇ、澤村くん」
「ん、何?」
「私さぁ……」
「うん」
「……澤村くんと、キスしたい」
一瞬、頭の中が真っ白になった。