第4章 先生だって恋します。【澤村大地】
「すいません!高校生のくせに生意気なこと言いました!」
ビシッと音がしそうな勢いで、澤村くんが頭を下げた。
「そ、そんな!澤村くんに言ってもらえて嬉しいです」
数秒間の沈黙が流れた。
一定の速さで紙を刷る、印刷機の音だけが聴こえていた。
「……それって、俺だから嬉しいって事ですか?」
「ええ……言葉通り」
「……俺は……
俺は……期待しても、良いんですか?」
澤村くんはこう言うと、開けっ放しになっていた印刷室の戸を静かに閉めて、私に近付いて来た。
「……あの、苗字先生。今から俺が言う事、迷惑だったら教えてください」
「?は、はい」
大きな澤村くんとの身長差で、私は彼を見上げた。
「……俺、苗字先生が好きです……授業中もずっと先生の事、見てました」
いきなりの告白に頭が働かない。
心臓がきゅっと締め付けられた。
自分の中に閉じ込めた感情を、引っ張り出される様な感覚だった。