第4章 先生だって恋します。【澤村大地】
白鳥沢に勝ち11月に入った日の昼休み、私は印刷室で、授業で配る予定のプリントを大量に印刷していた。
出入り口の引き戸が空いたままの印刷室には、廊下で談笑したり、どこかへ行く生徒たちの往来でザワザワしていた。
(なかなか終わらないな……)
「苗字先生?」
ふと、戸の方から私を呼ぶ声がした。
澤村くんだった。
廊下から私の姿が見えて、声を掛けてくれたようだった。
「澤村くん。こんにちは」
「ちわっす!」
澤村くんが一緒にいた菅原くんに、「悪りぃ、先行ってて」と声を掛け、印刷室の中に入って来た。
「苗字先生、手伝う事があれば俺やります」
彼の優しさに、私は感服した。
「ふふっ、いつもありがとう。今は刷ってるだけだから大丈夫です」
「そうですか」
少し寂しそうに答える澤村くん。
「澤村くんは、どうしていつも私の事を手伝ってくれるの?先生、頼りないかな?」
彼が善意から手伝ってくれているのは分かっていたが、謙遜か照れ隠しか。
私は澤村くんを目の前にして、試すような事を言ってしまった。
「苗字先生は……
もっと、自分に自信持って良いと思います」
「えっ?」
「確かに新任したばかりの頃は、緊張してて頼り無かったけど……
今はもう、立派な学校の先生です!」
私はその時、一生徒からの予想外の言葉に目を見開いた。