第1章 キスから始まるストーリー【澤村大地】
「澤村くん、今いい?」
休み時間が終わる直前や教室移動中のちょっとした合間、俺の周りから友人達が散った時なんかに掛けられる彼女からの言葉。
彼女との秘密の時間が始まる合図。
「……あぁ」
誰にも勘づかれないように、何ともない顔を精一杯演じる。
空き教室に素早く移動して、手短に、でも濃厚で熱い時間が始まる。
「……ん」
「はぁ……んっ、苗字……」
教室に入るなり、性急に唇を奪われる。
最初は啄むような短いキスを何度も繰り返し、段々と開いてくる唇に器用に舌を滑り込まれる。
ねっとりとお互いの舌を絡ませ合えば、何度も経験している筈の行為も俺の身体を熱く燃え上がらせる。
「……ふ、ぁ」
「んぅ……澤村くん……じょーず」
俺のクラスメイト、苗字 名前とこんな関係になったのは、2年生があと少しで終わる1月頃のことだった。